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鰻屋




 梅雨が来る。


 湿気が増える。


 人は少し疲れる。


 そんなころ、江戸の町には鰻の声が立ち上がる。


 『鰻屋』は、鰻を食べる噺というより、鰻をめぐる人間の間合いを描いた噺である。


 魚を裂く。串を打つ。焼く。待つ。売る。


 そのどれもが、江戸前の時間である。




江戸前大蒲焼鰻鱣堂 蔵版|嘉永五年(1852年)五月


『鰻番付』より


東京都立中央図書館所蔵




助六:

「先生、鰻って魚ですかね。」



純基先生:

「魚だな。」



助六:

「じゃあ江戸前ですか。」



純基先生:

「裂いて、串打って、焼いて、客が待つ。そこまで揃って江戸前だ。」



助六:

「魚だけじゃないんですね。」



純基先生:

「鰻は、時間ごと食うんだ。」



魚河岸落語魚類図鑑 第一号 鰻

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